遅く寝れば寝るほど子供の睡眠時間が削られてしまう!
睡眠時無呼吸症候群のみならず睡眠不足は、健康に甚大な被害をおよぼすことは今や周知の事実です。
特に、脳が発達段階にある子供たちの睡眠不足は、我が国だけでなく世界規模で深刻な状態にあると専門家が警告を鳴らしています。
では、幼少期から10代の成長過程にある少年少女はどれだけの睡眠を必要としているのでしょうか?
まず最初に理解すべきなのは、成長過程にある子供たちは脳も発達段階にあるため、大人より多くの睡眠が必要であることです。
また、眠りと起床のリズムが大人と異なり、睡眠の準備をするためのホルモンである「メラトニン」の放出も遅いので、夜眠くなるまでに時間がかかります。
そのため、就寝が遅れてしまい、結果的に朝起きるのも遅くなってしまうのです。
更に、幼稚園、学校は始業時間が決まっているので、朝は無理にでも一定の時刻に起きる必要があります。
そのため、遅く寝れば寝るほど睡眠時間が削られてしまうことになります。
睡眠不足は子供たちの脳の発達にも悪影響を及ぼす
10代の少年少女の脳は発達段階にあるので、子供たちの考えや感情、行動、人間関係は大きく変化します。
脳のつながりの変化は、思考能力の向上と脳神経の伝達の変化に関係します。
脳がバランス良く発達しないことは、10代の子供が起こすリスクやストレスを増大させることにつながります。
短い睡眠習慣が慢性的に続くと、意欲や記憶力の減退など精神機能への悪影響に加え、ホルモン分泌や自律神経の働きにも大きく影響し心身に支障をきたす場合があります。
先程の研究では、8時間未満の睡眠が、自殺や太りすぎ、自傷、注意力の欠如、成績の低下といったリスクを上昇させると結論づけています。
他方、8時間以上の睡眠は、子供にとって人生の満足度の向上、健康上の問題の減少、家族関係の向上などと関係することが示されているとのこと。
画像引用:全日本民医連
また、アメリカのシアトルの2つの高校で行われた研究結果も興味深かいものがありました。
登校日および休日に6時間以下の睡眠しかとらない子どもは、6時間以上眠る子供に比べてアルコールや薬物を摂取するリスクが大きくなるとのこと。
また、車やバイクを運転した際に事故を起こす危険性も高いことが示されました。
さらに睡眠時間が短く睡眠の質が低い子供よりも、睡眠時間が長く眠りの質がいい子供は、高血圧や高コレステロールのリスクが小さく、インスリン抵抗性、ウエストサイズといった点でもよい結果を示したとのこと。
子供たちにはどれだけの睡眠時間が必要?
スマホやパソコンの利用、SNSやチャット、動画といった周辺の環境が、子供たちの睡眠に大きな影響を及ぼします。
その一方で、子供の就寝や睡眠時間に親があまり関心をもたない傾向にあるとのことも事実です。
子供の睡眠時間と健康についてこれまで発表された数多くの論文を調べた結果、13歳〜18歳の子どもが最大限に健康になるためには1日で8〜10時間の睡眠を必要とすることが示されています。
画像引用:NAVERまとめより
仮に、夜9時に寝て朝7時に目覚めるとすると10時間の睡眠がとれます。
子供の健全な成長にとって削って良いのは前後の1時間づつということになります。
しかし、これまでの研究で、学校に通う子供の53%が8時間未満の睡眠しか取れていないことが判明しています。
また、年齢が上がるほど、8〜10時間の睡眠時間を守れない傾向にあることもわかっています。
宿題などを「先延ばし」してしまう理由も、睡眠不足が原因?
また、勉強や宿題などやりたくないことをついつい「先延ばし」してしまう傾向がありますよね。
いつまでも宿題をしない子供を叱った経験がある方も多いと思います。
嫌なことを先延ばしする傾向は、子供に限らず大人でもあることですが、この原因の一つに睡眠不足が上げられます。
これまでは、子供のもつ性格の問題とされてきました。
しかし、実験により個人の資質ではなく睡眠不足が原因となっている可能性が高いことが明らかになりました。
こちらは、子供を対象にしたものでなく成人を対象にした実験ですが、アムステルダム大学の研究者が「先延ばし」する原因を追求すべく行った結果、
・睡眠の質は、翌日の先延ばし度合に影響を及ぼす
・睡眠の質が悪い場合、自制心が強い人より弱い人の方がより強く悪影響を受ける
・睡眠の質が良い場合、自制心の強さにかかわらず先延ばし度合は低い
という結論が導き出されたとのこと。
つまり、先延ばししやすい傾向は、個人の資質よりも睡眠不足や睡眠の質により強く影響を受けているということが判明したのです。
子供たちの健全な成長のための8時間の睡眠習慣を身に着けさせる
専門家は、子供たちの健全な成長のための8-10時間の睡眠習慣のため、以下のようなアドバイスをしています。
(1)朝はしっかり朝日を浴びる
(2)朝ご飯はきちんと食べる
(3)昼間はしっかり運動する
(4)お昼寝は3時前に済ます
(5)寝るまでの習慣を身に着ける(歯を磨く、トイレに行く、おやすみ挨拶)
(6)暗い部屋で寝る
(7)休日でも早寝早起きの習慣を守る
また、テレビやスマートフォン、パソコンなどの画面から放たれる光が体内時計のリズムを狂わせる原因になります。
それらのデバイスが睡眠の質を悪くすることはかねてから言われており、睡眠時間が短くなる危険性も高まります。
子供の睡眠を促進するには寝る前にこれらの画面を見ることを制限するべきだと思います。
睡眠不足が指摘される生活習慣は、親の責任です。
これらアドバイスを参考して、体が本来持つ体内時計のリズムを取り戻すことを子供といっしょに心掛けると良いですよね。